fc2ブログ
   津市の唐人行列・唐人踊りの由来

 戦国武将・藤堂高虎(1556~1630)は、豊臣秀吉の朝鮮侵略戦争の折、朝鮮の南原城から儒学者・姜沆(カンハン)を拉致連行して、伊予大洲城(現愛媛県大洲市)に拘留した。

 拘留中の姜沆が、高い学識と教養、品格を備えていることを知った高虎は、その身柄を徳川家康が滞在する京都伏見に移し、ある程度の自由を与えた。

   藤堂高虎s-   カンハンs-
     藤堂高虎       姜沆

 姜沆は京都において藤原惺窩と会合・交流・親交を深めた。(参照、朝鮮通信使14「藤原惺窩と姜抗」)
 姜沆は、藤原惺窩、角倉了以らの援助を受けて、朝鮮に無事帰国した。
 藤原惺窩は、江戸時代初期に日本の儒学祖として名を成した。

 藤堂高虎は、関ヶ原の戦いや大坂の陣で徳川家康につき、武功を上げて家康の信頼を得、伊賀、伊勢路の要衝の地に国替え、伊勢津藩の初代藩主となった。

   3層角櫓
       津城跡に残る三層の角櫓

 高虎は、家康が推し進めた朝鮮との和平交渉、その後の善隣友好の使節・朝鮮通信使の日本往還実現に協力したものと思われる。
 
 家康は臨終の際、「国に大事あらば藤堂高虎を一番手とせよ」とまで言わしめるほど、高虎に対する家康の信頼は厚かった。

 高虎は、1次朝鮮通信使(1607年)京都伏見において、2次、(1617年)3次(1624年)は江戸において迎えている。

 朝鮮から連行してきた姜坑の学識と教養を認識している高虎にとって、朝鮮通信使の江戸入場から帰国するまでの全行程を見聞して、学問、医学、書画、音楽など朝鮮文化の高い水準を確認する機会になったと思われる。

 そして、高虎は、朝鮮文化を国元の伊勢津藩に導入することを考えていたのではと想像される。

 高虎の幕府に対する献身と朝鮮文化に対する憧憬は、2代目藩主高次に受け継がれた。

 1636年、第4次朝鮮通信使が江戸往還した。この年、津八幡宮の造営が完成した。

 藤堂高次は、城下町津の繁栄を促すために町々に資金を貸し与えた。各町々では、八幡宮祭礼に練り物や仮装行列を繰りだし競い合って楽しんだ。この時から分部町の唐人行列・唐人踊りが始まったと伝えられている。

 なぜ、分部町の人々は唐人行列・唐人踊りを始めるようになったのか?

 分部町の人々は、関ヶ原の戦いで東軍に味方して、西軍に包囲された津城に入城し戦ったという。江戸に幕府が開かれると分部町の人々は、日本橋伝馬町に店舗を開き伊勢商人の基を築いた。伊勢商人の江戸進出は高虎の尽力によるものと考えられる。

 江戸繁栄の象徴であった日本橋に店舗を連ねた分部町の人々は、幕府あげての国家的盛儀であった朝鮮通信使歓待の様子を目のあたりにして、この素晴らしい異国文化を郷里の津の人々に見せたいと相談して唐人行列を計画した。当時、分部町を束ねていた四三右衛門の国際友好の精神によって、「唐人行列、歓喜踊り」が実現した。

 こうして始められた唐人行列、唐人踊りは、毎年の年中行事として行われ明治維新、日清戦争、日露戦争、朝鮮植民地化(日韓併合)などの政治的事変の空白期があったが、太平洋戦争が開戦するまで続けられた。

 1945年7月の津市大空襲によって、分部町は廃塵に帰した。「形名旗」だけが個人の家に残されたが、唐人行列の旗、衣装、楽器、仮面など全て焼失し、唐人行列、唐人踊りの復活は不可能な状態にあった。

   形名旗
      朝鮮通信使の龍を描いた形名旗

 しかし、分部町の人々は、戦後の苦難の中でも唐人行列、唐人踊り復興復元にとりかかり、清道旗、赤黄黒の朝鮮服、大将(正使役)の衣装、表情豊かな仮面、かね、太鼓、大ラッパ、横笛などを調達して、津まつり復興の原動力となった。

 1967年、復活・津まつりに分部町町印旗を先頭に、登り龍を描いた形名旗、清道旗、役唐人、楽工(ラッパ、笛、かね、太鼓)、大将(正使)、傘もち(ひょうきんな面をつけ赤い傘を大将にさしかける)、軍官(弓矢をもつ)、ささら(朝鮮帽子をかぶり悪霊ばらいの役)、拍子木役などつぎつぎ登場した。まさに津の人々が待ちに待った賑やかな唐人行列、唐人踊りの復活であった。津市民の感激の様子が目に浮かぶ。

   津17
        津まつり 唐人行列

 「他の風流が次々と姿を消していった中で、この「唐人踊り」だけが連綿として3百年以上の長い生命を保っているのは、ユーモラスで異国的なあじわいと分部町の人々の変わらない熱意によるものである」と『津市史』は誇らしげに書いている。

 津市に残る唐人行列、唐人踊り、380余年の歴史を振り返って見ると空白期と中断は全て戦争が原因である。

 平和の大切さを思い知らされる津まつりの唐人行列・唐人踊りではなかろうか。
 つづく

Secret

TrackBackURL
→https://tei1937.blog.fc2.com/tb.php/701-64759965