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2016.07.14 高麗の里57
      高麗・狛人の武蔵鐙造り


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              高麗の里  巾着田内の馬牧場

 古代高句麗(BC37~668 年)は東アジアの最強国の一つであった。
 高句麗は騎馬民族国家で馬の飼育や馬具の生産、乗馬技術は優れていた。高句麗古墳壁画(世界文化遺産)には、馬で狩りをする図や馬術競技(流鏑馬)、騎馬行進図などが多く描かれている。

 
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        鎧馬騎士団  高句麗壁画古墳より模描

 新羅・唐連合軍によって、660年に百済が滅び、668年には高句麗が滅亡した。百済・高句麗遺民が大挙日本に渡来した。北九州から瀬戸内海を経て畿内へ、または北陸能登半島、越前海岸から畿内・中部地方・東国地方に移り住んだと思われる。
 また、日本には百済、高句麗が滅亡以前から、すでに多くの百済人、新羅人、高句麗人(高麗人・狛人)が渡来定着していた。
 4世紀~ 6世紀にかけて高句麗からの渡来人が多摩郡狛江付近(現在の狛江市・三鷹市・武蔵野市・川崎市の一部)に定住していたことが遺跡・遺物から明らかになっている。
 東京都狛江市の地名は、高句麗=コマ「狛」に由来すると云われている。
 狛江には約70基の古墳群があり、“狛江百塚”とも呼ばれていた。
 「都教委の調べによると、兜塚(狛江市泉水749)は、高さ4メートル、直径30メートル,約1200百平方メートルの円墳。今では原型がなくなってしまったが、約500メートル南西の亀塚(前方後円墳)がかっての発掘調査で、朝鮮半島からの帰化人集団の古墳とみられる」(読売新聞1975年2月5日付)
 遺跡調査から組合式箱形石棺、鏡、玉、武器、馬具類多数と「神人歌舞画像鏡」(東京国立博物館蔵)が発見された。この「神人歌舞画像鏡」と北朝鮮の平壌で発掘・発見された同型のものである」(『日本の中の朝鮮文化』金達寿著)
 狛江の古墳群は、現在都市化が進み住宅地に変容してしまった。ただ一つ、住宅地の片隅に「狛江亀塚」石碑があって、高句麗人(狛人・高麗人)居住した痕跡を残すのみと云う。
 古代、武蔵国多摩郡で馬の飼育や馬具・鐙(あぶみ) が造られた記録が残されている、
 「古くより武蔵鐙と称するものあり、ここに遷されたる高麗人の造るところぞ、盛衰記に畠山重忠小坪合戦の時,用ゆ云、今の世に五六鐙と称するものはその遺製なるし」(『大日本地名辞書』板東編) 
 また、「古くより世に武蔵鐙と称するものあり、此処に遷されたる高麗人の造るところと云」(『新編武蔵風土記稿』)

   馬具   あぶみ
                    鐙(あぶみ)
  鐙(あぶみ)は、馬の背に載せた鞍から左右 1対を吊り下げ、馬に登るときや、乗っているときに足をかけるための馬具である。これを使って乗馬することを「鐙を履く」と云う。鐙は、馬上での弓矢・武器を使用を可能にして騎馬術を発展させた。
 武蔵鐙を造ったとされる高麗人は、高麗郡設置(716年)以前の6世紀頃に武蔵国多摩地方に定着していた古層の高麗・狛人(高句麗人)であったと思われる。
 その根拠として、古代武蔵国多摩郡では馬を飼育、繁殖が盛んに行われて、石川牧・由比牧・小川牧等の牧場・官牧があった。この時期の高麗郡における馬の飼育、牧の存在は確認されていない。
 また、古代武蔵国多摩郡坂浜村(現稲城市坂浜)に鐙野(あぶみの)・鐙塚(あぶみつか)という地名があり、(『武蔵名所図会』) 現在、東京都稲城市立第二小学校の周辺を鐙野と呼ばれている。そして、この小学校の校歌に「あぶみが原」の地名が歌われているという。これらのことから武蔵鐙は、このあたりで造られたものと推定されている。
 武蔵鐙は高麗郡の高麗人よって造られたと単純に考えていたのであるが、調べていくと高麗郡が設置される以前、すでに多摩郡に渡来定着していた「古層」の狛人・高麗人の手によって造られていたことがわかった。
 古代、多摩文化研究者の岡田清子さんは
 「武蔵の古渡りの狛びとたち「牧で飼育されていた武蔵のコマ(駒)に使われる鞍や鐙を考えると、鐙を造ったコマ人も汎称としての狛びととみた方がよさそうである。・・・多摩山中での鐙造りのコマ人も、のちに高麗郡から流出してきた高麗人ではなく、逆に高麗郡へ集中を命ぜられなかった、古渡の狛びとの系列に属する工人とみたい」(『多摩のあゆみ』47号「多摩の古代朝鮮文化」)
 納得できできる説であり、筆者も賛成である。
 

  s-馬射戯
       高麗の里 巾着田で行われた馬射戯(まさひ)競技の一場面

 武蔵鐙は、「高麗の里」の 高麗人でなく、高麗郡設置以前の古層高麗・狛人(高句麗人)によって造られたいう結論になったが、筆者にとっては渡来人に関する考古学的資料や多くの研究者の著作・研究成果を知る貴重な機会となった。
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