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 21世紀に入った2001年、定年退職した在日コリアン有志が集まり

 サークル「丹青会」を結成した。

 このサークルは朝鮮半島の統一問題をはじめ朝鮮の歴史、文化、科学技術、

 在日コリアン、日・朝関係問題等の勉強会である。

 3ヶ月ごとに定例会を開き、そこで勉強した主題と内容をまとめて1年ごとに

 同人誌『丹青』を発行してきた。

 2003年4月に創刊号から毎年1冊づつ積み重ねたが8号をもって終刊となった。

 終刊になった理由は8号発刊直前、「丹青会」の発起人であり、

 常にリーダーシップを発揮してきたK氏が他界したためであった。

 メンバーの誰もが近い将来、必ず復刊し9、10号を出す意志を持ち続けている。
 
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             『丹青』誌 1~8号

 筆者は「丹青会」結成当初から参加し、『丹青』創刊号から8号まで8編の論稿を掲載した。

 筆者の論稿を読んだ読者・友人からブログ記事にすればと積極的な意見があり、

 また、東大和市民ネットの仲間の勧めもあって、

 これまで『丹青』誌に載せた記事の中から、 何編か選んで次回から掲載する。

 今回は『丹青』創刊号の巻頭言を紹介する。

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            『丹青』創刊号表紙と巻頭言

 「二年間の結実を公開して、同人誌『丹青』の創刊号をだす。

 <丹青>とは、『漢書・蘇武』にある『丹青所画』を典拠とする熟語で

 朱色と青色、色彩画を意味する古語である。

 わたしたちは、あえてこの<丹青>という古語を現代に復活させ、

 同人会の呼称に、さらに同人誌の表題に採用した。

 いま、<丹青>という語はわたしたち同人の価値観、死生観を

 凝縮させた語としてよみがえる。

 在日同胞社会の中堅であったわたしたち2世も、歳月の流れともに

 いつしか還暦、定年を迎え、社会活動の一線から退く 世代となった。

 人生九十年の時代を迎えて、第二の人生をどう主体的に生きるのか、

 それはけっして<老後、余生>といった消極的な言葉で包摂されてはならない。

 わたしたちの前途にも豊かな可能性をはらんだライフステージがある。

 このかけがいのない第二の人生を自己の実現をめざして積極的に生き、

 円熟した絵筆でカンパスいっぱいに彩色豊かな絵を描こうではないか、

 これが<丹青>の第一義である。

 <丹青>の<丹>は丹心、赤心を意味する丹である。わたしたちはタテ組織社会の

 地位や肩書きにいつまでも執着しない。権威に屈し、財富におもね、

 不条理に沈黙した人間の弱さを省みる。わたしたちは互いに知性と人格を尊重する

 ヨコ組織、損得勘定を超えた人間関係の共同体の構築をめざす。

 同人たちを結ぶ絆はただひとつ、丹青の丹である。

 わたしたちの生の活力源は、祖国、民族そして同胞への愛である。

 21世紀を迎え祖国・朝鮮はいま分断と相克の歴史を止揚して、

 統一と和解の歴史へと転換しつつある。

 わたしたちは、祖国と民族そして同胞への愛を心に深く秘め、良心の命ずるままに

 激動する祖国と在日の歴史に関与するつもりである。一片丹心―これが丹青の理念である。

 同人誌『丹青』は、わたしたち同人が勉強会で語りあった主題と内容、

 山歩き会や飲み会の思い出を編んだものである。素人にとる手作りの私製本ではあるが、

 わたしたちが第二の人生の出発点で編んだ意義深い記念碑でもある。

 ひとはなにかをつくり、なにかを生み出すことで人生をこよなく楽しむ。

 わたしたちは丹青会の日々の活動の中でこの楽しみを体験している。

 丹青の<丹>は、赤子を生みだすという意の<誕>、 あかい太陽が

 地平線上にある意の<旦>と同系の文字であるという。

 まずは始めること。これが<丹青>のもうひとつの含意である。」
 
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