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      おたあジュリア

  十字架2
    おたあジュリアの十字架 神津島
  
 2012年、NHKのテレビ番組「歴史ヒストリア」・『おたあジュリア』が放映され、2016年、劇団わらび座がミュージカル「ジュリアおたあ」の公演を行ったという。
 そして、おたあジュリアを主人公にした小説や漫画も何冊か発行されているようである。
 
 このようなことから、おたあジュリアについて一般的には知られているように思われる。

 筆者は、これまで、おたあジュリアについては関心外であったため、テレビを見ることも本を読むこともなかった。

 今回、朝鮮通信使のブログ記事作成のため調査・勉強する過程で、おたあジュリアは朝鮮から連れてこられ、そしてその後、数奇な運命を強いられたことを知ることになった。

 1592年、キリシタン大名・小西行長は、豊臣秀吉の侵略軍先鋒隊として朝鮮に上陸、平壌を攻め落としたとき、親を失った6歳の少女を保護し連れ帰った。
 
 朝鮮朝の両班(支配階級)の娘と思われるが、生年や、両親、家系、名前などすべて不明のまま肥後(熊本)宇土に連れられてきたのであった。
 
 キリスト教徒の小西夫妻は、少女に「おたあ」と名を付け、さらに洗礼を受けさせ「ジュリア」と洗礼名を与えた。
 
 小西家は元来、薬種業を営む商人であったことから、おたあに薬草の知識を習得させたと言われている。

 とくに行長夫人ジェスタ(菊姫)の教育のもと、おたわは高い教養と人を惹きつける魅力を兼ね備えた美しい女性へと成長した。
 おたあは、小西家でのわずかな期間、平穏な日々を過ごしたと思われる。しかし、おたあの平穏な日々は長くは続かなかった。

 1600年、関ヶ原の戦いで西軍についた小西行長は、東軍に敗れて捕えられた。自害が禁じられているキリスト教徒の行長は、敗軍の将として処刑され、小西家は没落した。

 関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は、おたあの才気と魅力を見初め、駿府城の大奥に召し上げ、侍女として寵愛した。
 
 ところがおたあは、キリスト教の信仰を捨てよとの要求を拒否しつづけただけでなく、家康の正式な側室への抜擢にも難色を示した。
 ジュリアは、用事を作っては城を抜け出し貧しい人々を救うため働き、夜になると聖書を読み、他の侍女や家臣たちをキリスト教信仰に導いたと言われている。

 家康は、おたあを気にいって正式な側室として迎えたいと執着したが、キリスト教徒のおたあを側室にする事はできなかった。

 民を支配する徳川幕府にとって、万民の平等を唱えるキリスト教は相いれないものであり、おたあの活動は許しがたいものとして次第に圧力を加え、ついに1612年、キリスト禁教令によっておたあを伊豆大島へと流罪追放した。

  ジュリア1
       おたあジュリアの流罪地

 その後も、家康のおたあに対する執着は続いた。信仰を捨て戻ってくるように、赦免と引換えに家康への恭順の説得が続いたが、その度におたあは殉教の決意で拒み続けた。そのため、さらに遠島の新島、神津島へと流罪追放されたのであった。
  
 おたあは、どこの地においても熱心に信仰生活を守り、見捨てられた弱者や病人の保護や、自暴自棄になった若い流人への感化など、島民の日常生活に献身的に尽くしたと伝えられている。
 新島で駿府時代の侍女仲間と再会して、一種の修道生活に入ったことなども言い伝えられている。

 ジュリアは、流刑地においても人々に慕われる魅力的な女性であり続けたとされ、それを証明するかのように島にはおたあのものとされる供養塔が残っている。

  おたあの墓
      おたあジュリアの供養塔

 ジュリアは、神津島に流刑となって4年後に死んだという説と、40年後に死んだという説がある。

 1622年2月15日付「日本発信」のフランシスコ・パチェコ神父への書簡に、おたあは神津島を出て大坂に移住して神父の援助を受けている旨の文書があり、のちに長崎に移ったと記されている。
 
 その後の消息および最期については不明であったが、1950年代に神津島の郷土史家・山下彦一郎が、島にある由来不明の供養塔がおたあの墓であると主張したことから、神津島で没したとする説が浮上した。

 おたあは、いつ生れ、いつ何処で亡くなったか不明のままである。

 ただ、おたあジュリアは、戦争と権力者によって翻弄されつづけた数奇な生涯・一生であったという史実だけが残されている。
 
  ジュリア祭
    おたあ祭りに掲げられたジュリア肖像画

 現在、神津島では毎年5月(1972年から)、日韓のクリスチャンを中心としておたあの慰霊祭(おたあ祭)が行なわている。
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