月下情人
        (げっかじょうじん)

 これは愛し合う男女が、人眼をさけて深夜、合っている場面である。
 朝鮮では、長期にわたり儒教の教えを極端に拡張して、「男女7歳ニシテ席ヲ同ジクセズ」として、男女の自由な交際を禁止した。
 結婚に際しても親同士が話を決め、本人たちは結婚の日に初めて会うということも少なくなかった。
 そういう社会的環境の中で、愛し合う男女は、この絵のように交通禁止となる夜の三更(23時~1時)に家を抜け出し、約束の場所に急いだのである。

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 三日月も二人の心を知るかのように、光を落とし西に沈もうとしている。そのお陰か、男の持つ行灯に照らされて足下だけが明るく、周囲はもうろうとして土塀の上部も闇につつまれ、あばら屋だけが人目をさえぎっている。
 女性はときめく心を抑えかね、男に近ずきながら、被り物を握りしめているが、心はすでに男に傾いていることは、その靴の方向ではっきりする。行灯を持つ男も全身で愛情を現し、共に歩もうとしている。
 この画家(申潤福)が、閉鎖的な社会環境の中で、男女の愛に対して同情し、かつ肯定的なまなざしで、このような絵を好んで描いた心底には、当局の伝統的な政策に対する反抗心が積み重なっていただろう。
 当局者もこれを感じ取り、「いかがわしい絵」を描いたとして、図画省から追放したのである。その晩年についての記録はない。
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